深蒸し茶

2008年12月 茶況_No.245

平成20年12月11日

茶園では稲ワラやススキなどの山草を茶園の畝間に施す敷き草作業をする生産農家の姿が見られます。これからの本格的な冷え込みを控え、敷き草は根の防寒対策や防水対策にも効果があります。また、細く切って施せば有機質肥料として土づくりにも役立ちますので、冬場の重要な管理です。今年の秋冬番茶は重油価格の高騰が影響して前年を20%前後上回る価格の450~420円で取引されました。当初は減産予測でしたが、ドリンク飲料の原料用としての在庫薄と国産茶葉を確保するために関連業者の買い気が強く、買い手の生産要請に対応した生産を続けましたので、生産量は前年の10%前後の増産と推測されます。秋冬番茶だけは高値に推移しましたが、緑茶飲料の関連業者はより安い原料を求めており、安いお茶が増産されれば高価格帯のお茶の需要が減るのではと心配する声も聞かれます。お茶だけでは生活できないと野菜や果実などと組み合わせた「複合経営」の研修会にも積極的に参加しています。

産地問屋は消費地との情報交換を進めながら、仕上・発送作業を精力的に進めています。例年この時期は微調整のための問屋間取引が活発になるのですが、今年は一番茶の中級と棒茶・粉茶の出物類が動くだけで例年をやや下回る荷動きになっています。10・11月ともに前年を5~10%前後下回っていますので12月の出荷に期待していますが、予想以上の不況感から昨年に比べて贈答用上級茶の引き合いが鈍いようです。

消費地では「歳末商戦」真っ只中で、包装と発送の作業に追われています。冬のボーナス支給額も落ち込み、消費者は財布の紐を以前にもまして締めていますので厳しい展開となっています。顧客とその知人を対象として「お茶のいれ方教室」などの体験教室を開いて顧客の囲い込み、新規客の開拓、需要の底辺拡大に努力しているお店もあります。「ゆとり」や「やすらぎ」などといったリラックス効果を感じてもらえれば、急須を使う緑茶ファンの拡大にもつながりますので続けることが大切です。

10月の百貨店売上高は前年同月比6.8%減と9月の4.7%減から一気に2.1%も下がっています。一方、スーパーの10月の売上高は前年同月比5.2%減と3ヶ月連続のマイナスとなっています。自社よりも1円でも安い商品がある店のチラシを持ってくればチラシと同じ価格で販売しますと宣伝するスーパーまで出始めました。また、期間限定でレジで最大20%分の現金が戻ってくるキャンペーンや、1万円で1万1千円分使えるプリペイドカードの発売など、あの手この点で新しい戦略を考え出しています。10月の外食産業界も2ヶ月連続で前年実績を下回り、特に単価の高いメニューが多いファミリーレストランの苦戦が続いています。牛丼の「吉野屋」は3回食べた客に並盛1杯を無料で提供するセールを展開するなど、お客を奪い合う体力勝負の様相が強まってきました。「他店との競争が激しく、環境の変化にはすぐに対応しないと生き残れない」のが市場の声です。市場の冷え込みは想定以上に厳しく、消費者心理に訴える商品展開・商品刷新と時代に合わせた新商品やサービスなどの戦略を練る機敏性が求められています。

《最終便・初荷便のお知らせ》

最終便・・・12月26日() 、初荷便・・・1月5日()

 

負の連鎖のきざし

 

日本の景気が失速しています。株価は急落し、新車販売台数は三割近く落ち込みました。日銀は中小企業の資金繰り支援策を講じていますが、建設・不動産・運輸・流通・製造と、あらゆる業種で倒産が増加しています。このような状態が続きますと、金融市場を一段と縮み上がらせ、金融機関は中小企業の不況色の強い業種や体力の弱い企業への融資に尻込みをするため、資金繰り難による倒産の拡大が懸念されます。特に今は、不安心理が先行して生産縮小・雇用の悪化・消費の縮小という負の連鎖が加速しています。中小企業だけでなく上場企業からも「このままでは年を越せない」という声まで出始めました。企業が資金繰り破たんするようでは雇用確保どころではありませんが、生産縮小を受けて社員を減らす勢いが加速しているのも現実です。相次ぐリストラに不安を抱える労働者からは対策を求める大合唱が起きています。しかし、この国では首相をはじめとして政治家や官僚にはさほどの危機感はないのか、言葉の軽さだけが目立ち、言葉が心に差し込んではきません。経済にせよ国際政治にせよ、百年来初めてという大変動が兆しているにもかかわらず、来たるべき破局を直視したくないようなのです。テレビ番組はお笑い番組全盛で見るに耐えない企画ばかりですが、この国はこれでいいのでしょうか。極端な競争原理ばかりが働いて、「売れれば良いもの」「売れないものは悪いもの」といった風潮や、不用になったといって人々を物のように解雇する大企業をモラルなき拝金主義とまで言わしめ、世の中と人の心はすさむばかりです。不満とストレスに満ちた社会では凶悪な事件が頻発していますが、こんな世の中を誰も望んではいません。

日本はすでに人口減少社会に入っています。人が減る以上、経済が縮小するのは自然の流れです。つまり、マイナス成長が常態化する時代に入っているのです。税金・保険料を納める若者よりも受給する高齢者の方が多くなっていくのです。地方経済に配慮した経済政策や保険制度を実行すれば現在の景気が浮揚し、将来の不安は解消されるという願望もありますが、人口減少という現実を見据えれば一時しのぎに過ぎないような気がします。少子高齢化や消費不況の影響で百貨店業界は縮小傾向に入り、再編がますます進みつつあります。店舗の大きさや品数の豊富さを売り物にしてきた既存の「百貨店」や「総合スーパー」は転機を迎えつつあるのです。消費者は「お値打ち品」や「得した感を感じられるお店」の方へ移り始めていますので、店側はすばやく対応しないと売り上げは落ちる一方ですが、「改装すればお客が来る時代は終わった」との声もあります。では「どうすれば物が売れるのか」。出口の見えない苦しい戦いがまだまだ続きそうです。

苦しくなり始めたときに無理をして攻めに転じたことにより身動きがとれなくなった企業や、新しい事業への進出と設備投資が余裕資金を食いつぶしたところへ、不況による本業の不振で資金繰りが悪くなり万策尽きて倒産、というパターンは数知れずあります。とにかく今は、自社の業績不振や業界全体の凋落の原因を冷静に分析して「乗り切れてよかった」と今日のことが語れる日まで体力を温存する時期であることは確かなようです。