深蒸し茶

2022年3月 茶況_No.379

令和4年3月18日

茶園では生産者の方達が新茶に向けて施肥などの管理作業を進めています。冬季の冷え込みや小雨の影響で生育はやや遅れ気味ですが、13日夜間の降雨で乾燥気味の茶園も潤いました。しかし、新茶期に向けてまだまだ雨が必要な園相です。生育状況を見ながら芽出し肥料も施肥しいきますので茶園の見回りは欠かせません。これから防霜ファンの点検と製造機械や乗用型摘採機の整備も進めていきます。静岡県は茶業振興計画案(2022~2025年度)で有機茶園を現在の2倍の400haへの拡大を目指します。有機茶作りは静岡茶の輸出増につながると期待されます。国内はリーフ茶需要の減少傾向が続いていますが、輸出は右肩上がりです。21年の輸出金額は前年比26%増の204億、静岡県も58億円を目標に掲げ、茶商が求める品質・数量・価格で供給できるように生産体制を強化します。掛川市は市内農家を対象にアンケート調査を実施しました。有効回答を得た337人のうち84%の282人が後継者無しと答え、経営主の年齢は最年少が32歳、最高齢が88歳で平均年齢は64歳で後継者不足と生産者の高齢化という厳しい現状が改めて課題となりました。農地を守っていくために政府は「人・農地プラン」を法制化しました。少子高齢化で農業後継者が減る中、農地を集約して意欲ある農家に貸し出すプランです。基盤整備が必要な場合は費用負担が要らない事業制度の活用も可能です。JA経済連が発表した一番茶平均単価19%高の2085円、二番茶44%高の800円と価格が安定したことで茶農家の生産意欲は上向きつつありましたが、今年は重油代・電力費の高騰で意欲に水を差す事になりそうです。

産地問屋は仕上・発送を進めながら新商品・新販路の開拓に努めています。コロナ禍で需要に不安はあるものの今年も良い原料の確保に向けて生産者との情報交換を進めています。茶生産量は29.700トン(鹿児島26.500トン)と静岡県が63年連続1位の座を保っていますが、茶生産額は鹿児島は252億円(静岡県251億)と金額で初めて抜かれました。

茶どころ日本一を自負していた県内業者に強い衝撃が広がりました。茶農家数は20年前の1/4の5700戸まで減り県茶業は岐路に立っています。2000年にリーフ茶7:3ペットボトル飲料だった割合は2020年はリーフ茶3:7ペットボトル飲料と差が広がりました。ペットボトル飲料の原料は二番茶と秋冬番茶が使用され、一番茶が収益の柱となる農家の経営は、ますます厳しくなると同時にリーフ茶を主に販売する産地問屋の経営も年々厳しくなっています。新型コロナウイルス禍に伴う政府の支援融資の返済開始が今年の4月から来年にかけて本格化しますので今後、廃業・倒産が急増するのではないかと懸念が広がっています。

消費地では新茶に向けて販売計画や仕入計画を進めています。一世帯当たりの緑茶支出額は2000年比48%減の3530円と20年で半減しました。ライフスタイルの変化によりリーフ茶を急須で入れて飲む習慣が薄れつつあります。そんな中、茶の良さを十分に伝えようとカフェを併設して茶の魅力を体験できる場をつくるお店もあります。お店に人が集まる仕組みを作るために開かれた空間や素敵な景観を取り入れてファン作りを進めます。店内の居心地のよさやこだわりの商品を揃えて楽しさを提供する店作りが目標です。従業員の才能を生かす機会を提供して、それが顧客の喜びにもつながるなど、様々な施策を強力に推進している元気なお店もあります。

 

 

冷戦に戻る世界、国際秩序に衝撃

 ロシアのウクライナ侵攻によって既存の国際秩序が突き崩され何百万人もの人々の生活が破壊されています。これから世界はどこへ向かうのか、国際秩序は再構築されるのか世界中に不安が広がっています。2001年の米同時多発テロはアルカイダという非国家主体でしたが、今回はテロではなく国家による侵略です。主権国家の栄光を守ることが最善だと錯覚した指導者プーチンが起こした戦争です。これまでチェチェン紛争、シリア内戦、クリミア併合などで軍を動かし結果を出してきたので、今回もうまくいくと思い独裁者の賭けに出ました。ウクライナを丸ごとロシア化しようと中立化、非武装化を迫っています。そしてNATOに加盟しないことを約束せよと迫っています。NATOはソ連に対抗するために設立された軍事同盟で設立時は米英仏独など16カ国でしたが、冷戦終了とともに30カ国に増えました。国と国との関係を力と力で考える長期独裁政権にNATOは直接対決を避けています。それは核による第三次世界大戦を回避するためです。民主主義国家は合法手段で権力者の交代を実現できますが、独裁政権は交代させる仕組みがないのが問題です。軍事侵攻という信じ難い光景を目にしているのに、それを止める術がないのです。都市を無差別攻撃して何百人もの犠牲や難民が困窮し、病院・学校・原子力発電所までもが標的にされています。明白な国際法違反に対して国際裁判所はロシアに侵攻停止を命令しましたがロシアは聞く耳を持ちません。

できることはロシアに対する経済制裁です。国際法違反の侵略が起きた以上、制裁をしなければ再発を防げません。外国資産の凍結、SWIFT(国際銀行)からの排除、技術提供の禁止、ロシア産原油・ガスの輸入禁止、貿易優遇措置「最恵国待遇」の取り消しなど

ロシアを締めだす制裁はロシアへの痛烈な打撃となり、ロシアはデフォルト(債務不履行)に陥りますが、世界経済が被るショックも計り知れません。世界の政治・経済と社会全体に多大な影響を与えるでしょう。

多くの専門家は今年の世界の経済成長率の予想を大幅に下げています。NATOのエネルギーの約4割はロシアに依存していますが、ロシアからの輸入をボイコットすることにより世界のエネルギー価格の上昇は避けられません。すでに日本でもガソリン・電気などのエネルギー価格は上がっています。ウクライナ・ロシアは穀物輸出大国ですので小麦価格が上がって食品や日用品も値上がりしています。給料が増えれば問題はないのですが物価の上がり方に賃金の増え方が追い付いていないので家計は苦しくなるばかりです。ロシア国内でもカードが使えなくなり、銀行で自由に現金を引き出せなくなった市民が国外へ脱出する人々も出ています。ロシアは自国から撤退する企業や販売停止などの措置をとった企業に対し資産を国有化する方針を打ち出しました。トヨタ、日産、日立製作所、三菱電機などの工場やマクドナルド850店やユニクロ50店などには戸惑いと不安の声が広がっています。

アメリカはインフレを抑えるためと物価を安定させる狙いから「利上げ」に踏み切ります。日本もガソリン、電気料金、食料品、日用品など物価が上昇して、賃上げを求める動きが拡大しています。大企業は賃上げに対応できるのですが、中小企業は取引先の価格交渉や先の見通せない不安から対応できていません。

戦争が早く終わって、中国も融和的になれば、世界の雰囲気も変わるのですが…。どこでも行けて、どこと貿易してもいい、どこにでも投資ができる。そんな幸せな時代はなかなか戻ってこないと覚悟しなければなりません。当面は厳しい時代が続きますので企業には、発想の転換と将来を見据えた対応が求められています。